LGBTQについて考える

  先日出された先進7カ国(G7)の首脳声明では、ジェンダー問題に関し、LGBTQ(性的少数者)が暴力や差別を受けることのない社会の実現が表明されました。また芸能界や歌舞伎界などでも、LGBTQに関連した問題がマスコミ報道されています。

(1)LGBTQ性的少数者とは? 

  LGBTQとは、下記の単語の頭文字を並べたもので、セクシャルマイノリティ性的少数者異性愛に当てはまらない人)と同じ意味で使われる場合もあります。

Lesbian(〈レズ〉ビアン、女性同性愛者),  Gay(ゲイ、〈男性〉同性愛者),

Bisexual(バイセクシャル両性愛者),

Transgender(トランスジェンダー、体の性と心の性が一致しない人),

Questioning(クエッショニング、自分の性が決まっていない・分からない人)

* 2019年、博報堂DYグループLGBT総合研究所の統計によると、日本の約1割の人がLGBTQ(性的少数者に該当するとしています。

* 最近ではLGBTQ間の分断を避ける意味で、SOGI(ソギ,性指向及び性自認という語が用いられることもあります。

 

(2) 性の在り方セクシャリティsexuality)

 LGBTQの問題を考える場合は、a)体の性sex」、b)心の性性自認)」、c)性指向」、d)ジェンダーgender」も含めた幅広い概念である「性の在り方セクシャリティ)」という観点も考慮することが必要です。

 a)体の性・・・染色体や性器・性ホルモンなど、身体・生理的状態から判断される性。

 (例 )男性・女性・中間性など 

b)心の性・・・体の性とは別に、自分が認識している(心で感じている)自分の性。

 (例)男性・女性・中間性・わからない、など 

c)性指向・・・ 恋愛や性欲の対象となる性。先天的に備わっているもので、気分などで変わる好み(嗜好)ではありません。 

(例) ヘテロセクシャル(異性愛),ホモセクシャル(同性愛),バイセクシャル(

 両性愛),エイセクシャル(無性愛。性とは無関係)など

d)社会的な性ジェンダー性役割・性表現)・・・服装や言動、あるいは社会的な役     割などにみられる後天的に身につけていく性(差)。 

(例) 男らしさ。女らしさ。男は仕事、女は家事・育児。夫唱婦随。など

 現実には異性愛だけでなく、の4要素の組み合わせで、一人一人違った多様なセクシャリティが存在しています。(例)a「体の性」が男性の場合を挙げてみます。

・ a男性×b男性×c女性=異性愛,  ・a男性×b男性×c男性=ゲイ,

・a男性×b男性×c両性=両性愛,  ・a男性×b女性=トランスジェンダー

・a男性×bわからない=クエッショニング ・・・・・・・

 このような多様性ダイバーシティを理解しないで、男性と女性の異性愛のみに基づいた非科学的価値観でLGBTQを論じることは、「井の中の蛙」がよく知らない大海について論ずるようなものではないでしょうか。

 

(3)LGBTQに対する差別

 私たちが旧来の慣習や宗教などに囚われて、男性と女性しか存在しないという非科学的価値観(偏見)や単なる自分の好みから、性的少数者個人として尊重せず、異常者と見なして行動するならば、基本的人権(個人の尊厳、平等権、自由権生存権など)を正当な理由なくして侵害する差別になります。

(例)LGBTQの人に「キモイ」などの悪口を言ったりネットに悪口を書き込んだり、仲間はずれにしたりする。制服着用や健康診断、あるいは保健体育の授業などで「心の性」を配慮しない。婚姻や親権を認めない。就職試験時にLGBTQだとわかった時点で不採用にする。マンションの部屋を貸さない。LGBTQの差別解消を訴えるデモをしている人に、暴力を振るう。「LGBTQを認めると日本の古き良き社会が壊れる。」などと発言する・・・・・・

 

(4) 差別を解消していくために

 差別という問題は、「私は差別していない。」とか、「差別されている人はかわいそう。」など、個人的の問題ではなく、人権を不当に侵害している制度(規則、法律、社会)の問題です。女性差別に例をとって考えてみると、女性の方に男性より劣悪な労働条件(就職できない。非正規雇用。低賃金、昇進できないなど)を強いる不当な制度の下に、企業が利益の増大を図っていることがその本質です。男性が原因ではありません。人種や非正規雇用などの差別と同様に、低賃金による劣悪な女性の生活状況を見て、男性側には優越感差別意識が生じてくるし、女性側には劣等感自尊感情(自信)の喪失が生じてくるのです。労働者間に差別が生じると労働組合が弱体化し労働条件改善の力が弱まるので、賃金は上がらず企業の利益は増大していくのです。

 LGBTQ差別も、就職や同性婚を認めない制度によって生じています。同姓婚やLGBTQ差別禁止、あるいは夫婦別姓に対する制度法的に整備されてきている日本以外G7各国〈下表〉では、LGBTQ差別(以前は犯罪者や病人扱いを受けていました)が解消に向かっていることがその証左です。

(表)G7各国で、同性婚などの制度が法的に認められている(○)、

   認められていない(×

 

日本

日本以外のG7の国

同 性 婚

×

性的少数者の差別禁止

×

夫 婦 別 姓

×

 日本以外のG7の国:USA・イギリス・ドイツ・フランス・カナダ・イタリア(同性カップルに結婚に準じる権利を認めている)。法律で夫婦同姓を義務付けているのは日本のみ。                 <東京新聞web2023.2.7より作成>

 

 しかし日本国民の多くがLGBTQ差別を善としているわけではありません。次の【性的マイノリティについての調査】では、同姓婚の法制化には反対の2倍の賛成がありますし、差別禁止法の制定にも約9割の賛成があります。

 

【性的マイノリティについての意識】          2019年全国調査より

 同性婚の法制化に〈賛成〉は、2019年調査で64.8%、〈反対〉は30.0%。2015年と比べて〈賛成〉は13.6ポイント増加。20代の〈賛成〉は、2019 年調査で83.8%と高い。

 性的マイノリティ性的少数者に関わる施策については、回答者の87.7%が差別禁止法の制定賛成している。 

 

 以上のことから、国民の考えとは異なる非科学的保守的な(昔の制度を守ろうとする)政治が行われていることにLGBTQ差別の核心がありそうです。女性差別、あるいは非正規雇用の問題もすべて同じことですが、LGBTQ差別がない社会を実現するためには、私たちが差別的な制度を改善するための職場などでの活動を行うとともに、民主的な候補者に、積極的に投票棄権差別を助長する)することによって、差別を生み出さない制度をつくることが大切なのではないでしょうか。