いじめの定義,形態,特徴

「いじめ」の定義,形態・特徴 

                                                                           福 田  求

                              “ののはな”教育相談

 
   

1 いじめの定義                                        *(注)や太字は福田による

 平成25年9月に施行された「いじめ防止対策推進法」(平成25年法律第71号)においては,「いじめ」を「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校(注1)に在籍している等、当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって,当該行為の対象となった児童等心身の苦痛を感じているものをいう。」と定義しています。

 

 同法に基づき,同年10月に文部科学大臣が決定した「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成29年3月改訂)では,同法にいう「一定の人的関係」とは,当該児童生徒と何らかの人的関係を指すとされ,また,個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は,表面的・形式的にすることなく,いじめられた児童生徒の立場に立って行う必要があるとされています。

 (注1)小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校、ただし幼稚部を除く

   しかし現場では、生徒がいじめを訴えてきた場合、担任や生徒指導担当者などが、「生徒の心身の苦痛」を聴き取るという観点より、「表面的・形式的」な事実関係の解明に重点を置いて聞き取りを行い、いじめはなかったと判断している場合もあるようです。また教師自身が「いじめと言うよりは『からかい』だ」とか、「あの生徒は皆に構ってもらいたいから、大げさに言っているだけだ」、あるいは「被害妄想だろう」などと独善的に判断している場合も少なくないようです。

実際のいじめは、形式的に教師が事情聴取した程度では発見できないくらい巧妙に、しかも陰湿化しているのに加えて、いじめがあったことを素直に教師や保護者に話すような生徒はほとんどいないということが、いじめの発見段階での大きな隘路となっていると考えられます。

 

2 いじめの形態と特徴                         

(1)いじめの形態

① 小さな暴力を繰り返したり、教師や大人の前では仲の良いふりをしたりして、いじめに気づかれにくくする。 例 コンパスの針で背中を刺し続ける。転んだふりをして給食を床に撒き散らす。

② 「汚い」「醜い」などのイメージを植え付けたり、共犯関係を演出したりして、いじめを正当化しようとする。 例 給食の中にゴミや虫の死骸などを入れておき、それを少しでも食べたら、汚いものを食べた事実を言いふらす。

③ 徹底して恥をかかせ、抵抗しようとする気持ちや判断力を奪い去り、奴隷にしてしまう。

【いじめは、生きる力を奪う】

日々のシカト(無視)が続くなかで、唯一の救い(他者との交わり)が、悪質な「いじめを受けること」であるとしたらどうでしょうか。

「自殺をするのは弱いからだ。」と被害者を責めるような論調も見受けられますが、インフルエンザに罹った人を「身体が弱いからだ」と責めるようなものです。度重なるいじめによるストレスうつ状態を引き起こすと、どんなに強い人であっても「自分は生きる価値がない」と考え、自らの命を絶つようになるのです。被害者を責めることは、いじめの本質に目を向けることを妨げ、被害者の救済やいじめの解決には逆効果となるのです。      <福田>

例: 女子の下着を廊下に貼り出し、もっとひどいことをするぞと言って脅しながら、万引きやエンコー(援助交際)を強要する。

④ 相手の存在を許さないような言葉を投げつける。 例:「マジ、なんで学校くんの?」「あんたさぁ、なんで生きてんの?」「(学校の屋上で)なんで飛び降りないの?」

⑤ ネットを悪用して陰湿にいじめる。

例1: 出会い系サイトに、標的となる生徒の写真付きで「エンコーしてくれる人探している中学生の○○です。メールください」と「なりすましメール」を流す。

例2:ライングループから対象生徒を外したり入れたりすることを繰り返して、精神的に動揺させる。

(2)いじめの特徴

① 動作が遅いとか性格がおとなしいといった「弱い」子どもばかりではなく、「強い」子どもも含めたあらゆる子どもが、お互いに親しいと思われている関係のなかで、いじめの対象となる傾向が高いようです。

② 一人を複数でいじめる傾向にあることから、いじめの首謀者が誰であるかハッキリしておらず、いじめを行う側の子どもが罪の意識を感じていない例が多くなっています。

③ いじめに実際に加担していなくとも、いじめの行為を面白がって見ていたりはやしたてたりする「観衆」や、いじめを見て見ぬふりをしている「傍観者」や「無関心者」が、いじめを助長する役割を果たしています。

④ ネットの匿名性を悪用したいじめがより陰湿化し、被害者に深刻な孤独感を与えたり、ネットの持つ仮想現実性(ゲーム性)が加害者の現実感を損なったり、卑劣な犯罪を行っているという罪悪感を希薄にさせたりしています。

 【2種類あるいじめとは?】

 「暴力を伴ういじめ」は一部の者だけが何度も繰り返し経験する一方で、「暴力を伴わないいじめ」は、多くの者が数回程度の経験にとどまっていることが見てとれます。両者は、同じように「いじめ」と呼ばれていたとしても、異質なものであり、どの子どもにも起こりうるいじめと、一部の「気になる子」が 中心になる(暴力を伴う)いじめとは、異なる対応が求められるのです。<2010年に「国立教育政策研究所」がまとめた「いじめ追跡調査」より> 

「ネット上のいじめ」の特徴

不特定多数の者から、絶え間なく誹謗・中傷が行われ、被害が短期間で深刻なものとなる。

・ 匿名性の高さから安易に書き込みが行われるため子どもが容易に被害者にされたり加害者になったりすることができる。

・ インターネット上に掲載された個人情報や画像は、容易に加工できるので悪用されやすく、また一度流出した個人情報は回収が困難であり、不特定多数の他者からアクセスされる危険性が高い。

・ などが、子どもの携帯電話等の利用状況や掲載された内容などを詳細に確認することは難しい。<「ネット上のいじめ」に関する対応マニュアル・事例集(学校・教員向け,文科省より作成>

・ ラインの返信ルールガラケー時代は3分、スマホ時代は3秒以内で返信しなければならないと言われている)を守らないとライングループから外されるので、スマホを片時も離すことができない状態となっている。

(3)いじめという犯罪

 

 どのような事情があるとしても、人をいじめることは、基本的人権〔参照次頁(注2)〕を侵害することになるので、犯罪に問われる場合があります。

 たとえ、「自分もいじめられたことがあるから」だとか、「いじめなければ自分がいじめられることになると脅されたから」というような理由で人をいじめたとしても、自分の罪が軽減されることにはなりません。いじめは、多数の力を頼みにして少数の人を不幸のどん底に突き落とす卑劣な犯罪なのですから、いじめに加わった人には、法による厳しい裁きが下されるようになっているのです。

参考 犯罪に問われるいじめ

① 廊下ですれ違う時などに、特定の生徒に、「死ね!」・「殺す!」と何度も言った→ 脅迫罪

② 嫌がっている相手に、プロレスの技をかけて痣を作った→ 傷害罪

③ いつも嫌がる相手の手を払って、相手の弁当のおかずを食べている→ 窃盗罪

④ お金や物を「返すから貸して」と言って借りて返さなかった→ 詐欺罪                

⑤ 他の仲間を脅して気に入らない子を仲間はずれにさせた→ 強要罪

⑥ 「キモイ」などと校内やネット上などで、実名を挙げて悪口を言った→ 侮辱罪

 

 

(注2)基本的人権とは?】

私たち皆が、人間らしく幸せに生きるために行使できる権利(基本的)人権と言います。日本国憲法では、基本的人権は何人も永久に侵すことができない権利として私たちに与えられていると規定されていますが、私たちの不断の努力によって保持しなければ、その権利は失われてしまうものだと警告しています〈参照7頁(2)〉。          

 一方、いくら自由が保障されているといっても、人の人権を侵すことは許されていません。いじめを例をとると、言論や表現の自由があるからといってAさんを侮辱する(参照ヘイトスピーチなど)と、Aさんの尊厳や安全に授業などを受ける権利を侵害することになるので、侮辱した人が罰せられることになるのです。  

 

日本国憲法に規定されている主な人権〕                                                                             

① 自由権:誰にも(特に国家自治体にも)束縛や干渉を受けない権利

 *身体の自由:不法な身体拘束や拷問・残虐な刑を受けない,苦役に服させられない,自白を強要されない,適正な手続きを受ける権利や公平な裁判を受ける権利など

 *精神の自由:集会・結社・言論・出版・表現・思想・信条・学問・信教などの自由,通信の秘密など

 *経済の自由:財産・職業選択・営業・居住・移転の自由など

② 平等権:誰でも等しく法の適用を受けることができる権利

 *人種・信条・性別・社会的身分・門地などによるあらゆる差別禁止,両性の本質的平等

③ 社会権健康で文化的な生活を送るために必要なことを、国や自治体などに保障させる権利

 *生存権,教育を受ける権利,労働基本権(団結・団体交渉・団体行動権),勤労権など

④ 参政権請求権:国民が主権者として国政に参加したり、一定の給付や行為を請求したりする権利

 *選挙・被選挙権,国民審査権,住民投票権・憲法改正時の国民投票権,国家賠償請求権など