いじめの心理
3 いじめの心理
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(1)加害者の心理
加害者の心理としては、「おもしろいから」とか、「いじめられている子どもに非があるから」というように、自分の欲求不満を「合理化」して、無意識のうちに解消している場合が見られます。特に暴力を伴ういじめの加害者の心理的特徴としては、自他への不信感から、仲間と楽しそうに遊んでいても、明日は皆が自分から離れていくのではないかという不安や猜疑心、あるいは孤独感などに苛まれており、誰とも親密な人間関係を築くことができない事例が多いようです。
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【サイコパス】日本語訳は「精神病質者」。(略)サイコパスの特徴的性格は、冷酷・無慈悲・尊大・良心の欠如・罪悪感の薄さなど。<知恵蔵miniより作成> |
これは幼い頃から周囲(特に親)から虐待などを受けてきた子どもによく見られる特徴です。彼らは、「自分は可愛いがってもらえない存在だ」という根源的な不安や不信感が、周囲への攻撃性に繋がっていくのです。また自尊感情が低く情緒不安定でストレス耐性も低いので、何らかのストレスを感じたときには、自らの感情をコントロールすることができずに、衝動的にいじめなどの反社会的な行動をとったり自傷したりして、欲求不満を解消しようとすることが多いのです。
一方、凄惨ないじめを行った加害者が、いじめを否認したり正当化したりして良心の呵責を感じていない場合は、行為障害〔成人では反社会性パーソナリティ障害(参照サイコパスなど〕なども考慮しなければなりません。彼らには、刑事責任の追及と併せて、精神的なケア(治療など)を受けさせることも必要となってきます。言うまでもなく彼ら加害者が、自からいじめた事実を親や学校に報告することはほとんどありません。
(2)被害者の心理
被害者の心理としては、まず「助けを求めたくない」ということが挙げられます。理由としては、親に助けを求めても「お前も悪い」と責められるし、先生も何もしてくれないので「何も変わらない」と考えているからです。また、「チクった(告げ口をした)」として報復されることを恐れたり、親などに心配をかけたり悲しませたりしたくないと考えることも多いようです。周囲に関わられるのを避けて、「黙って逃げ出したい」「遠くへ行きたい」という思いに駆られる場合もあるようです。
あるいは、「いじめられていることを認めない」という心理もよく働くようです。それは自分がいじめられている弱い存在であると人に知られるのがあまりにも惨めで、「プライドが許さない」からです。「無視されるよりはいじめを受けているほうがまだましだ」という屈折した心理が働くことも知られています。被害者には以上のような心理が働くので、いじめが発覚して事情を訊かれても、あまり信頼関係ができていない教師などに、いじめられている事実や心身の苦痛を「話さない」・「話せない」ことが多く、いじめが発見されにくく、また解決にまで至らない場合が多いのではないかと考えられています。
(3)観衆や傍観者の心理
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【機能不全家族】 子どもが心身ともに健康に育つ場としての機能を果たしていない、次のような家族のことを言います。 ● 親の性格が未熟で、子どもに対する過干渉、虐待・暴力、放任などによる支配が日常的に行われている。 ● 親は子どもには完全を要求するが、無意識では自分より劣っていて欲しいと願っている。 ● 夫婦間の不和などにより両親が力を合わせて教育する力が損なわれている。 ● 親が特定の家族への対応に追われて、他の家族を思いやる余裕がない。 |
観衆の心理としては、加害者と同様に自分の欲求不満を「合理化」して無意識のうちに解消している場合が見られます。一方、傍観者(無関心者)の中には、「止めたいが止められない」と諦めていたり、「なんとなく見ていた」「まったく気づかなかった」と自らの主体性や社会性の欠如を露呈したりする子どももいます。
また観衆や傍観者は、「他人がいじめられている間は安心だ」と考えていたり、次は自分がいじめの対象となることに不安や恐怖を抱いていたりするために、加害者(強者あるいは多数者)に同調する心理(同調圧力)に支配されてしまうのです。つまり、主体性(自信)がない子どもたちは、数人のメンバーによるいじめにはなんとか耐えることができても、クラス全員にまでいじめが広がって、「(一人)ぼっち」になることには耐えることができません。そうならないためには、たとえ親友がいじめられていたとしても、保身のためにいじめる側に付いて、そこでの支配的な文化(言動・考え方・ファッションなど)に同化(没個性化)してしまうのです。
これは現代社会全体に広がっている「他人指向型(注3)」人間の心理そのものであり、ファシズム(個人の自由や権利よりも、国家の利益を最優先する国家主義的全体主義的な政治理念や政治体制。例 第二次大戦時のナチズムや我が国の軍国主義など)を支える心理とも言えるものです。「空気を読む」、「忖度する」、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」、「ラインの3秒ルール」などに見られるこの心理は、政権を追及する野党を批判したり、有力者に頼まれた候補者に投票したり、政治的無関心に陥ったり、労働組合に入らなかったりする行動をとらせることに働いているのです。
(注3)他人指向型: 社会学用語。外部志向型ともいう。 D.リースマンが伝統指向型や内部指向型と区別して、現代大衆社会の人間の社会的性格としてあげたもの。この型の人間は,常に他人がどう行動しているかに興味をもち、他者への感受性と行動面での同調性によって性格づけられている。またレーダ型の(遠い目標より手近な目標に従う)人間でもあり、彼を統制するものは彼の内なる不安であるとされる。 <ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典>